メニエール病対策に『中耳加圧療法』

手術が必要な難治型のメニエール病に効果大と、リンパ液の回収を促す『中耳加圧療法』が話題になっています。 中耳加圧療法とは、携帯型の機器を使って耳の中から内耳の外側部分(中耳)に空気を送り込んで、内耳にかかる圧力を高め、 内耳の過剰なリンパ液の回収を促す治療法です。日本では比較的新しい治療法といえますが、 欧米ではすでに広く普及しており、メニエール病への有効性が続々と報告されています。

中耳加圧療法は、ポンプが付いた携帯型の機器を本体から延びたチューブの先端を異常がある側の耳に挿入し、 空気を送り込むだけです。そもそもメニエール病は、耳のリンパ液が過剰になることで起こります。 ところが、専用の機器で空気を送り込み、その空気圧で内耳に適当な圧力をかけると、 目詰まりを起こしている老廃物が動いてはずれ、余分なリンパ液の回収が促されます。 その結果、リンパ液によって圧迫されていた三半規管や蝸牛などの働きも正常になり、メニエール病が緩和されていくのです。

中耳加圧療法は、基本的に自宅で行います。やり方は、1回当たり5分ほど専用の機器で空気を送り、これを1日に3回繰り返します。 すると、早い人なら2ヶ月くらいでめまいが治まることもあります。
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■体への負担が少ない画期的な新療法

グルグルと回るような激しいめまいのほか、耳鳴りや難聴をも併発する「メニエール病」は、 耳の奥(内耳)を満たすリンパ液(細胞から余分な水分や老廃物を運ぶ無色透明の液)が過剰になり、 三半規管や蝸牛などの器官を刺激するために起こる、と考えられています。 メニエール病の治療は、抗めまい薬や抗不安薬、利尿薬、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)、漢方薬などの 薬物療法が中心になります。しかし、薬物療法だけでは十分な効果が現れなかったり、再発したりするケースも少なくありません。 そうした難治型のメニエール病の場合、耳の後ろを切開して内耳を満たすリンパ液を強制的に排出する、 「内リンパ嚢開放術」という手術が行われることもあります。 しかし、この手術は、入院して全身麻酔を行う必要があり、体への負担が大きく、高齢者や他の持病を抱えている人には、 あまりお勧めできません。そうした中、体への負担がきわめて少ないと注目を集めているのが、 『中耳加圧療法』です。

中耳加圧療法とは、携帯型の機器を使って耳の中から内耳の外側部分(中耳)に空気を送り込んで、内耳にかかる圧力を高め、 内耳の過剰なリンパ液の回収を促す治療法です。日本では比較的新しい治療法といえますが、欧米ではすでに広く普及しており、 メニエール病への有効性が続々と報告されています。


●鼓膜チューブ留置術で改善する人も多数

中耳加圧療法は、ポンプが付いた携帯型の機器を使って行います。具体的なやり方は、本体から延びたチューブの先端を 異常がある側の耳に挿入し、空気を送り込むだけです。そもそもメニエール病は、耳のリンパ液が過剰になることで起こります。 これは、リンパ液を回収する内耳の小器官が老廃物などで詰まっていることが原因だと考えられます。 ところが、専用の機器で空気を送り込み、その空気圧で内耳に適当な圧力をかけると、目詰まりを起こしている老廃物が動いてはずれ、 余分なリンパ液の回収が促されます。その結果、リンパ液によって圧迫されていた三半規管や蝸牛などの働きも正常になり、 メニエール病が緩和されていくのです。 なお、中耳加圧療法を実施するには、事前準備として、異常がある側の耳の鼓膜に穴を開け、そこに極小のチューブ (直径約1mm、長さ約2mm)を固定する鼓膜チューブ留置術を行います。このチューブを通して、空気を送り込むというわけです。

鼓膜留置術は手術の一種ですが、中耳炎の膿を抜くときの処置としてそれまでも行われてきました。 鼓膜チューブ留置術は体への負担が少ないものの、耳鳴りや難聴がある人が行うと、まれに症状が悪化する恐れがあります。 したがって、治療をやるか否かは、患者さんと十分に話し合って決めなければいけません。 鼓膜チューブ留置術をした後は、半月〜1ヶ月の経過観察期間が設けられます。 実は、この期間中に患者さんの約半数は、中耳加圧療法を行っていないにもかかわらず、めまいなどの症状の改善が見られます。 鼓膜チューブを通して空気が耳の外に抜けると、内耳の三半規管や蝸牛などに関わっている圧力が低下します。 すると、リンパ液が過剰な状態のままでも、メニエール病の症状が和らぐケースが出てくるのです。 その後、経過観察期間が過ぎたら、専用の機器を使って中耳加圧療法を開始します。


●早ければ2ヶ月でめまいが治る

中耳加圧療法は、基本的に自宅で行います。やり方は、1回当たり5分ほど専用の機器で空気を送り、これを1日に3回繰り返します。 すると、早い人なら2ヶ月くらいでめまいが治まることもあります。 では、実際に、某研究グループが行った試験を紹介しましょう。

5ヶ月以上の薬物治療を続けて改善効果のなかった難治型のメニエール病の患者さん4人(男性1人、女性3人、平均年齢69歳)に、 中耳加圧療法を毎日行ってもらったところ、治療後6ヵ月と12ヶ月でめまいの頻度、強度、持続時間共に改善しており、 総合的な判定は、改善が2人、軽度改善が2人となったのです。
また、聴力については、2人が改善したものの、1人は不変、1人は悪化したと答えました。 この差はメニエール病の罹患期間と関係があり、罹患期間が短いほど聴力の改善が期待できることがわかりました。

このように、中耳加圧療法はメニエール病に効果を発揮していますが、いくつか問題点もあります。 まず、中耳加圧療法は健康保険が適用されません。しかも、治療に使う機器は厚生労働省の認可を受けていないため、 患者さん自身が購入することはできず、原則は危機を所有する医師からの貸し出しとなります。 しかし、国内での保有台数が限られているため、長期間の貸し出しが受けられません。

中耳加圧療法を中断した後に、めまいが再発することも問題です。 つまり、めまいを制御するために、長期にわたって中耳加圧療法を継続しなければならないということです。 また、事前に行う鼓膜チューブ留置術も、もともとは中耳炎に行われる手術なので、メニエール病の治療には健康保険の適用とならず、 受けられる病医院も限られています。 さらに、中耳加圧療法を行っている病院が少ないことも問題です。現在では、富山大附属病院や日本大学板橋病院、 岐阜大学病院、都立広尾病院、あさま耳鼻咽喉科医院(茨城県古河市)などで行われているのみです。 こうした課題はあるものの、内リンパ嚢開放術を行う前に、中耳加圧療法を試してみる価値は十分あるでしょう。