緑内障

緑内障』は、主に眼圧の影響を受けて「視神経」が障害され、視野が欠けていく病気です。 緑内障は、日本人の中途失明に至るリスクが最も高い病気です。 緑内障というと、眼圧の上昇で起こることが知られていますが、日本では、 眼圧が正常なタイプの緑内障が多いことがわかっています。 早期発見のためには、「眼圧検査」だけでなく「眼底検査」や「視野検査」も必要です。
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緑内障

■緑内障とは?

眼圧の上昇などが原因で視神経が障害される病気

緑内障は、「網膜」上に映った像を脳に伝える「視神経」が障害される病気です。 そして、その発症に深く関係しているのが「眼圧」です。 眼球内部では、内側から外側に向けて、常に圧力がかかっています。この圧力のことを、眼圧といいます。 この眼圧によって、眼球の球形を維持したり、網膜に”張り”をもたせています。 視神経は、約100万本の細い「神経線維」が集まって束になったものです。 神経線維は、網膜全体の細胞から集まり束になって視神経となり、眼球を出て脳へつながっています。 この、視神経が眼球を出る部分を「視神経乳頭」といいます。 眼圧が高くなったり、眼圧に対する視神経の抵抗力が弱いと視神経乳頭が圧迫されて、神経線維が切れてしまうことがあります。 そして、切れた個所に応じて、視野に見えない部分(視野欠損)が生じます。これが緑内障です。 放っておくと、神経線維の障害された範囲が広がり、ついには視野がほとんどかけて失明することもあります。

●発症頻度

緑内障は、40歳代以上の中高年によく見られます。2000年から2002年にかけて行われた疫学調査では、 40歳以上の日本人の約20人に1人が緑内障だったという結果が示されています。 そして、この調査のときには9割近くが、初めて緑内障と診断された人たちでした。 緑内障は、初期〜中期のうちは、自覚症状がほとんど現れないので、自分ではなかなか気付くことができません。 したがって、潜在的な患者数はもっと多いのではないかと考えられています。 2011年の人口推計では、40歳以上の人口は、日本全国で約7000万人ですから、 現在、緑内障の患者さんは約350万人いいると推計されます。

●「房水」が眼圧をコントロールする

眼圧は眼球内を満たしている「房水」という透明な液体によって、一定に保たれています。 房水は「毛様体」で作られ、「虹彩」の裏側(後房)を通って、虹彩の表側(前房)に出ます。 こうして角膜と水晶体の間を流れながら、角膜や水晶体などの組織に酸素と栄養を供給したり、 老廃物を受け取ったりしています。

その後、角膜と虹彩の間の「隅角」にある、「線維中帯」と呼ばれるフィルターのような組織で濾過され、 「シュレム管」という管から静脈へ排出されます。 この房水の産生と排出がバランスよく行われていれば、眼圧は一定に保たれます。 ところが、何らかの原因でそのバランスが崩れると、房水の流れが滞って眼球内に房水が溜まり、眼圧が上がってしまいます。 すると、視神経乳頭に強い圧力がかかって、緑内障が起こってくるのです。

緑内障の大半は、房水の産生と排出のバランスが崩れるような病気が特にないのに起こる「原発緑内障」です。 それ以外に、他の病気や薬の副作用、外傷などが原因で起こる「続発緑内障」もありますが、 ここでは、原発緑内障について説明します。



■タイプ@原発開放隅角緑内障

房水の排出口にあるフィルターが目詰まりを起こす

緑内障は、房水の流れがどのように滞ったかによって、「原発開放隅角緑内障」「原発閉塞隅角緑内障」 の2つに大別できますが、他に「続発緑内障」もあります。


●原発開放隅角緑内障とは?

房水の排出口で、フィルターの役目をしている線維柱帯が徐々に目詰まりしてくると、房水の水はけが悪くなります。 そのために眼圧が上がって起こるのが、原発開放隅角緑内障です。 線維柱帯は、房水を濾過する網目状の組織です。もともとは詰まった老廃物を自分で食べて処理する機能を備えています。 しかし、この機能が低下したり、処理能力を超える老廃物が溜まったりすると、目詰まりが起きてしまいます。

●眼圧が正常でも起こる

原発開放隅角緑内障の中には、線維柱帯の目詰まりによる”眼圧が高い緑内障”とは別に、”眼圧が特に高くない緑内障” もあります。これを「正常眼圧緑内障」といいますが、近年、日本人に大変多いことがわかってきました。 前述の疫学調査では、緑内障の人の7割以上が、正常範囲内の眼圧でした。 正常な眼圧の基準値は、一般に「10〜21mHg」とされています。しかし、眼圧が正常範囲内でも視神経が障害され、 緑内障が起こることがあるのです。 なぜ眼圧が正常でも緑内障になるのか、その理由はよくわかっていません。 今のところ、”視神経の耐えられる眼圧(健常眼圧)には個人差があり、視神経の弱い人は、正常眼圧でも視神経が 障害を受けてしまうのではないか”という説が有力視されています。 そして、視神経の抵抗力が弱まる理由には、強い近視があることや遺伝があげられていますが、 これについても詳細はよくわかっていません。


■タイプA原発閉塞性隅角緑内障

房水の排出口が塞がれてしまい、眼圧が上がる

角膜と虹彩の間の隅角が狭くなると、房水の排出口が塞がれてしまい、房水が目の外にうまく流れ出ません。 そのために、眼圧が上がって起こるのが、原発性閉塞隅角緑内障です。 隅角が狭くなるのは、年齢と共に水晶体が厚くなり、虹彩と接近して、虹彩の裏側から瞳孔への房水の流れが悪くなるためです。 その結果、後房に房水が溜まり、虹彩の根元の部分が角膜の方に押されてしまうのです。 隅角が完全に塞がってしまうと、目の中の房水が逃げ場を失います。 そうなると眼圧が急に上がり、「急性緑内障発作」を起こします。


■タイプB続発緑内障

緑内障以外の目の病気や外傷、全身の病気、薬などの影響で眼圧が下がるために起こります。 例えば、「糖尿病」による「糖尿病網膜症」が重症化した場合には、緑内障を併発することがあります。 また、外用薬や内服薬としてさまざまな病気の治療に用いられる「ステロイド薬」を長期間使い続けると、 眼圧が上昇して緑内障を発症することがあります。


■緑内障の危険因子

関係が明らかなのは、「眼圧」と「家族歴」だけ

ここでは緑内障の危険因子を、因果関係が明らかな「緑内障の発症にかかわる危険因子」と、 何らかの関係があると推測できる「緑内障の人に多い要素」に分けて説明します。

●緑内障の発症にかかわる危険因子

緑内障との関係が明らかなのは「眼圧」と「家族歴」の2つです。

▼眼圧
眼圧が高いと、視神経が圧迫されて障害を受け、視野が欠けてきます。 また、さまざまな調査から、眼圧が高ければ高いほど、緑内障の発症率も高くなることがわかっています。 ただし、日本人の場合は正常眼圧緑内障が多いので、眼圧が基準値の範囲内でも、油断はできません。

▼家族歴
両親や兄弟姉妹など家族に緑内障になりやすい人がいる場合は、定期的に緑内障の検査を受けることが大切です。

●緑内障の人に多い要素

緑内障との因果関係は明らかになっていませんが、緑内障の人には、次のような特徴を持つ人が多く見られます。

▼高度近視
正常眼圧緑内障を含む、原発性開放隅角緑内障の患者さんに、強い近視のある人がよく見られます。

▼遠視
原発性閉塞隅角緑内障の患者さんには、遠視の人が多い傾向があります。

▼低血圧・冷え性・片頭痛
正常眼圧緑内障の発症には、血液の循環障害が関係しているといわれています。 この3つは、いずれも血流の障害が関係して起こるもので、正常眼圧緑内障の患者さんにしばしばみられる特徴です。

▼高血圧・糖尿病
原発開放隅角緑内障で、眼圧が高いタイプの人には、高血圧や糖尿病の人が多くみられます。 また、高血圧や糖尿病があると、緑内障の進行が早まることがあります。